花崗岩

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花崗岩[注釈 1](かこうがん、英語: granite)とは、火成岩の1種で、流紋岩に対応する成分の深成岩である。

なお、石材として「花崗岩」と呼んだ場合には、必ずしも学術的な花崗岩とは一致しない。また、石材の場合は御影石(みかげいし)とも呼ばれるが、やはり「御影」と付いても、学術的な意味での花崗岩ではない岩石も含まれる。

地下深部で形成された深成岩の中で、下記2条件を満たす岩石を指して、花崗岩と呼ぶ。

大陸や島弧などの陸地を構成する岩石として、花崗岩は非常に一般的であり、各地で見つかる。花崗岩の平均密度は通常2.75 (g/cm3)付近である。しかし、産地や品種によっては1.74 (g/cm3)から2.80 (g/cm3)と幅が見られる。

花崗岩の英語名 granite の語源は、ラテン語で種子や穀粒を意味する granum である。数mm径の結晶が寄り集まった、粗い斑点状の構造を有するため、命名された。

なお、日本語の「花崗岩」という名称は、恐らく17世紀から19世紀頃に作られた名称で、19世紀中頃に英名のgraniteに当てられた[1]

花崗岩の主要構成鉱物は、石英カリ長石斜長石黒雲母白雲母普通角閃石である。磁鉄鉱柘榴石ジルコン燐灰石のような、副成分鉱物を含む場合もある。稀に輝石を含む。産地によって、その含有鉱物の種類や比率が様々に異なる。含まれる有色鉱物の名前を、少ない物から順に「花崗岩」の前に付けて呼ぶ。副成分鉱物の場合は「含~」と付ける。

一般に花崗岩中の鉱物の結晶の大きさは数mm程度で、大きくとも数cmまでである。それ以上の大きさの結晶を有する場合は、巨晶花崗岩(花崗岩ペグマタイト)と呼ぶ。巨晶花崗岩は花崗岩が固結する際に最後に残った部分と考えられ、通常は微量しか含まれない珍しい鉱物が濃縮されている場合が多い。また、大きな鉱物粒子の間に空洞が存在する場合もあり[注釈 4]、水晶(石英の結晶)や、蛍石トパーズ電気石(トルマリン)の結晶を産出する場合もある。

なお、岩石名の先頭に「細粒」(fine-grained)、「中粒」(medium-grained)、「粗粒」(coarse-grained)、「斑状」(porphyritic) などを付けて、粒子サイズによって区分する場合もある。

花崗岩は造山帯か否かを問わず、大陸地殻の全域にわたって広く分布している。深成岩ゆえに、地表に露出している部分より、地下深くに多く分布していると考えられ、大陸の表面を覆う比較的薄い堆積岩の下に横たわる基盤岩の大半を占めていると考えられている。これらの大規模な物(100 km2以上)をバソリス(batholith、底盤)と呼び、100 km2以下の比較的狭い範囲の物をストック(stock、岩株)と呼んでいる。

花崗岩は、恐らく完新世を除く、あらゆる地質年代にわたって地殻に貫入してきた。世界的には先カンブリア時代に生成した物が多いようだが、日本列島では茨城県日立市カンブリア紀の物が最も古く、中生代に生成した物が最も広い面積を占める。日本の地表では、阿武隈高地関東北部、飛騨山脈木曽山脈美濃高原近畿地方中部、瀬戸内海から中国山地北九州などに広く分布している。

このように地球上で花崗岩は、ごくありふれた存在だが、太陽系の地球以外の岩石天体には、ほとんど見い出されない。その理由は、花崗岩の形成に水の関与が必要であり、水の海の存在する地球でのみ花崗岩が大量に作られてきたためだろうと考えられている[2]

花崗岩の起源について、かつては2つの学説間で論争が見られた。しかし、現在では“マグマ説”が一般に支持されている。

例として産業技術総合研究所による岩石標準試料の1つであるJG-2(岐阜県蛭川村の苗木花崗岩)の組成を示す(単位は重量%)[3]

花崗岩は固くて緻密である。しかし、花崗岩は結晶粒子が大きく、かつ、鉱物の種類によって結晶の熱膨張率が異なるため、温度差の大きい所では鉱物の境界線の部分で結合が弱まり、次第にひび割れてゆき易い。例えば、直射日光などで直接加熱される花崗岩の表面などは、ボロボロになって崩れてゆき、いわゆる風化した状態へと変化し易い。さらに、花崗岩中の斜長石や黒雲母も、比較的風化を受け易い鉱物である。これに対して、花崗岩中の主成分である石英の結晶は、非常に風化し難いため、花崗岩の風化が進むと、構成鉱物の粗い粒子を残したまま、バラバラの状態になり、非常に脆く崩れ易くなる。このようにして生成した白から黄土色の粗い砂を、真砂土、あるいは単に真砂と呼ぶ。

花崗岩地帯には真砂が広く分布し、強い降雨により多量の砂が流れ出すため、日本では花崗岩地帯の多くが砂防地域として指定されている。また、真砂は学校の校庭の敷き砂などとして利用される。この真砂が河川によって海まで運ばれると、風化に強い石英を主体とした砂が残り、白い砂浜が形成される。例えば、瀬戸内海沿岸の白砂青松や山陰地方の砂丘は、中国山地の大量の花崗岩が元である。

また、石英と比べれば風化し易い鉱物である斜長石は、風化に伴ってカオリナイトへと変化してゆく。純度の高いカオリナイトは、陶土として使用される。それゆえ焼き物の街と呼ばれる場所は、花崗岩が地表に出ている地域の周辺に存在する場合が多い。例えば、瀬戸信楽などが、その代表例である。

石材として「花崗岩」と呼ぶ場合、学術上では花崗岩でない岩石(閃緑岩、ハンレイ岩、片麻岩など)も含まれる。

花崗岩は緻密で硬いため、日本では古くから石材として使用されてきた。例えば、石製の鳥居道標、城などの石垣や、石橋などに用いられてきた。さらに、三角点水準点の標石にも用いられてきた。また、花崗岩を用いた近代の建造物の例としては、国会議事堂の外装に日本産の花崗岩(広島県倉橋島産「議院石」、山口県黒髪島産「徳山石(黒髪石)」、新潟県産「草水みかげ」)が使われている[4]

光沢を出すために行う石材の表面研磨を「本磨き」と言い、この表面処理を施した石材は、ビルや商業施設、記念建造物の壁などに利用されている。逆に、床石など、滑ると危険な場合は、研磨した後に表面を化学薬品で処理して、滑り止め加工を施す例もある。また、「ジェットバーナー仕上げ」や「ウォータージェット」などの手法で、若干荒い表面に仕上げる処理もある。石段や敷石などの場合は、ノミ切り、コブ出しなどの手法で、ゴツゴツした表面に仕上げる場合もある。

高い強度と滑り易さを要求されるカーリングの公式競技用ストーンは、全てスコットランドアルサクレッグ島で産出される花崗岩で作られている。

近年日本で流通している花崗岩質の石材は、福建省を中心とした中華人民共和国産が多い。なお、中華人民共和国産石材は番号が付与されており、100番台が州を示している(「福建省」の場合 600番台)。

日本では花崗岩質の石材を御影石と呼ぶ場合がある一方で、花崗岩ではないのに御影と付けられた石材も存在する[5]

御影石の名は、神戸市の御影に由来する。六甲山南麓の荒神山で採石された石材(花崗岩)は御影に運ばれ、御影の港から船で日本各地へと輸送されていた[5][6]。その利用は中世から近代に及び、石垣や石柱などに利用されていた。御影石は良質な石材として日本で有名になり、他地域で採掘された御影石に類似した石材も「御影石」と呼ぶようになった。その後、六甲山でとれる御影石は「本御影」と呼んで区別した。1956年に六甲山が瀬戸内海国立公園に編入された結果、同地での採石は停止した[7][8]

ただし「御影」の名前は、日本各地の似た石材の産地にも転用された。代表的な例が、福島県伊達市を中心とした「吾妻御影」や、茨城県笠間市を中心とした「稲田石」、同じく茨城県の桜川市を中心とした「真壁石」などである。

なお、墓石などに使われる「黒御影」は花崗岩ではなく閃緑岩斑れい岩である。

石材としての花崗岩産地と商品名の例を挙げる。あわせて施工事例を示す。

様々な種類の花崗岩
宮島弥山山頂の花崗岩と真砂土。
レンソイスは風化した花崗岩で構成された砂丘である。
花崗岩の古い道標
「白」と「錆」:10 cm角ブロック
「御影石」の名の由来となった六甲山の花崗岩。